五行の分類のはじまり-1-

五行のもとになったもの

東洋医学は、森羅万象の事物を5つのカテゴリーに分類することを以前話しました。

この5つのカテゴリーは五行のことです。

東洋医学の五行は「木火土金水」の5つのことをいいます。

「木火土金水」の五行は東洋医学で発生したものではなく、東洋医学以前に東洋思想として存在していまし。

東洋医学に取り入れられて活用される前はもっとシンプルなものだったようです。

はじめは自然の現象を捉えるものだった

初めのころは五行は自然の現象を捉えるために使われていたのですが、それが次第に政治的なことに活用されるようになり、後にその性質や本質が人体の生体活動にも通じるということで東洋医学に取り入れられるようなったという経由があります。

ただ、この辺の話は相当昔のことで殷とか夏の時代あたりの話になります。

だいたい紀元前2000年とか1500年前とかくらいですね。

そのあたりからすでに五行の性質も特徴付けられていました。

儒教における書物の中に『書経』というものがあるのですが、その書物に五行の元の性質、土台となる性質が書かれています。

『書経』の「洪範」の箇所に五行の性質のことが記されています。

一に五行。

一に曰く水、二に曰く火、三に曰く木、四に曰く金、五に曰く土、水に潤下と曰い、火に炎上と曰い、木に曲直と曰い、金に従革と曰い、土は爰に稼穡す。

潤下は鹹を作し、炎上は苦を作し、曲直は酸を作し、従革は辛を作し、稼穡は甘を作す。

(国立国会図書館デジタルコレクション_『漢文叢書』_https://dl.ndl.go.jp/pid/1106073/1/299)

とあります。

五行における「水」の性質

意味を見ていくと、水の特性は「潤下」とありますが、この潤下というのは「潤」と「下」のことです。

「潤」は水が持っている「潤す」という性質を表していて、「下」は「下行性」を表しています。

「下行性」というのは水が低いところへ流れていく性質のことです。

これらのことから、寒・涼(気温が下がった状態・温度を下げる作用)、滋潤、下の方へ物事を運搬する作用があるものはすべて「水」に分類します。

また、「水」は「鹹と作す」とありますが、これは東洋医学の分類でいう五味のことで「鹹」は「しょっぱい」とか「しお味」のことです。

しょっぱさは「水」に分類されています、なので、見かたによっては「塩味」は水と同じ性質をもっているということになります。

「水」はこの概念から派生して「腎」と同じになるのですが、東洋医学では「腎」は固摂という作用も持っています。

「塩味」はこの固摂を助ける作用もあるとしています。

「水」は陰陽五行の中でも「陰」の要素が強いということがイメージできますよね。